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viteとtailwindcssでフロントエンドライブラリを開発する

はじめに

vitetailwindcss は主にアプリケーション開発に利用されますが、ライブラリ開発にも使うことができます。 tailwindcss はその特徴がそのまま利点になりますが、vite を使うことで、次の利点があります。

  • 高速なプレビュー環境の構築
  • CSS Modules の自動処理
  • CSS プリプロセッサの簡単導入
  • パスエイリアスの適用
  • Storybook のバンドラーを vite にすることで、余計なバンドラーが不要

Storybook については、バンドラーに webpack ではなく、vite を用いることができます。 詳しくは、以前書いた Storybook でバンドラーに Vite を使う をご覧ください。

ライブラリ開発の力点は、テスト環境だったり、ドキュメントだったりするのですが、 今回は、ライブラリそのものに焦点を当てて、高速なビルド環境の構築方法を紹介します。

なお、コードベースに react を採用した例で説明しますが、 vite がサポートしている他のフレームワークについても、参考になるかと思います。

環境構築

まずは、プロジェクトの雛形を生成します。

npm init vite@latest --template react-ts
cd project_name
npm i -D @types/node

また、今回は適当な例のコンポーネントとして、次のコンポーネントを作ってみます。

src 以下にエントリポイントや、コンポーネントを作成します。

src/index.ts

export * as SwipeBar from "@/components/swipebar";

src/components/swipebar.tsx

const Swipebar = (): JSX.Element => {
  return <div className="w-24 h-1 inline-blick bg-gray-200 rounded-full" />;
};

export default Swipebar;

ファイル構造は次のようになります。

.
├── index.html
├── package.json
├── src
   ├── components
   └── swipebar.tsx
   ├── index.ts
   └── vite-env.d.ts
├── tsconfig.json
└── vite.config.ts

パスエイリアスの設定

ライブラリでパスエイリアスを利用しているプロジェクトをあまり見たことはありません。 しかし、リファクタリング時にインポートパスの修正が不要だったり、インポートパスがわかりやすくなったりと、いいことが多いです。

型定義ファイルの出力時に、tsc のデフォルトではパスエイリアスを解決してくれないことが、利用率が低い要因の一つだと思っています。 後ほど紹介する tsc-alias は型定義のパスエイリアスを解決してくれるツールです。

これを利用するとパスエイリアスの問題は解決するため、まずはパスエイリアスを設定します。

tsconfig.json は次の設定を追加します。これにより、VSCode ではインポートパスにインテリセンスが効くようになります。

tsconfig.json

{
  "compilerOptions": {
    ...,
    "baseUrl": ".",
    "paths": {
      "@/*": ["src/*"]
    }
  }
}

また、vite.config.ts も次のようにします。

vite.config.ts

import { defineConfig } from "vite";
import react from "@vitejs/plugin-react";
import { resolve } from "path";

export default defineConfig({
  plugins: [react()],
  resolve: {
    alias: {
      "@": resolve(__dirname, "src"),
    },
  },
});

tailwindcss のライブラリ用の設定

次に tailwindcss を導入します。

npm i -D tailwindcss@next postcss@latest autoprefixer@latest
npm run tailwindcss init

tailwindcss には postcss が必要なので設定します。

postcss.config.js

module.exports = {
  plugins: {
    tailwindcss: {},
    autoprefixer: {},
  },
};

また、エントリーファイルで tailwindcss をインポートします。

src/index.ts

import "tailwindcss/tailwind.css";

export * as SwipeBar from "@/components/swipebar";

例ではこの記事の作成時点ではまだアルファリリースの 3.0.0-alpha.1 を使いますが、 JIT エンジンが組み込まれた 2.1 以上であれば問題ありません。

tailwind.config.js が作成されたので、それを編集します。 ライブラリ用の CSS を出力するには、次の2つの変更を加える必要があります。

  • Preflight を無効にして、副作用のあるグローバルスコープの CSS を出力しない
  • Prefix を設定し、出力するクラス名を調節する

Preflight は tailwindcss のデフォルトスタイルですが、グローバルに影響を与えるため、ライブラリとしての使用は不適切です。 Preflight で生成されるデフォルトのスタイルは base.css を確認してください。

また、Prefix を使用しなければ、生成されるクラス名は、アプリケーションで利用されるクラス名と同じです。 ライブラリの利用者が tailwincss を利用していてかつ theme フィールドをカスタマイズした場合、意図しないスタイルになる可能性があります。

これらに対応するために、tailwind.config.js を変更します。

[!WARNING] tailwindcss 2系を利用している場合、フィールド名は content ではなく purge です。

tailwind.config.js

module.exports = {
  jit: true,
  content: ["src/**/*.{ts,tsx}"],
  theme: {
    extend: {},
  },
  plugins: [],
  corePlugins: {
    preflight: false,
  },
  prefix: "mylib-",
};

これで tailwind のクラス名にはプレフィックスが必要になりました。

例えば次のようになります。

src/components/swipebar.tsx

<div className="mylib-w-24 mylib-bg-gray-200" />;

dist/style.css

.mylib-w-24 {
  width: 6rem;
}
.mylib-bg-gray-200 {
  --tw-bg-opacity: 1;
  background-color: rgb(229 231 235 / var(--tw-bg-opacity));
}

幸い、VSCode の Tailwind CSS IntelliSense を使っている場合、プレフィックス付きのクラス名にインテリセンスが効きます。 また、--tw-bg-opacity のような CSS カスタムプロパティはスコープが閉じているため、影響はないはずです。

しかし、残念ながらバンドラーのプラグインとして、プレフィックスにハッシュ値を使うといったことはできないはずです。

そのため、プレフィックスを付けたとしてもクラス名が重複する可能性があることには注意してください。

次に紹介する CSS Modules であれば、その心配なく利用できます。

CSS Modules

vite はデフォルトで CSS Modules に対応しています。

*.module.css ファイルは CSS Modules として認識します。

swipe.module.css というファイルを作成し、スタイルを追加します。

src/components/swipe.module.css

.swipebar {
  @apply mylib-w-24 mylib-h-1 mylib-inline-block mylib-bg-gray-200
    mylib-rounded-full;
}

このスタイルの利用は次のようにします。パスエイリアスは CSS のインポートに対しても利用できます。

src/components/swipe.tsx

import { swipebar } from "@/components/swipe.module.css";
const Index = (): JSX.Element => <div className={swipebar} />;

export default Index;

ビルドすると次のような出力になります。

style.css

._swipebar_5xd3q_1{display:inline-block;...}

サフィックスにハッシュ値が付与されたクラス名が出力されます。 実際には、CSS Modules しか利用しない場合、tailwindcss のプリフェックスの設定は不要です。

ビルド時に tailwindcss のクラス名は、スタイルとして置き換わるためです。

ただし、インラインクラス記法と CSS Modules を併用する場合には、プリフェックスの設定をしたほうが無難です。

CSS Modules と型定義

TypeScript プロジェクトの場合、上記の CSS Modules のインポートで、リントエラーが発生します。 CSS Modules の型定義がないためです。

これを解決するには、型定義ファイルを作成する必要があります。自動生成できる CLI があるのでそれを利用します。

npm i -D typed-css-modules

tcm コマンドが利用可能になります。

npm run tcm src

tcm <input directory> 形式で実行できます。すると、CSS Modules の型定義ファイルが生成されます。

swipe.module.css.d.ts

declare const styles: {
  readonly "swipebar": string;
};
export = styles;

これにより、型安全にクラス名をインポートできるようになります。 また、他にも --watch 引数でファイルの監視などができるようです。詳しくは typed-css-modules を確認ください。

CSS プリプロセッサ

.scss.less などの CSS プリプロセッサも簡単に利用できます。 .scss を利用する例を見てみましょう。

vite がプリプロセッサを処理するためにインストールが必要です。また、先程の typed-css-modules はデフォルトでは Sass に対応していません。 typed-scss-modules というライブラリがあるのでそれを利用します。

npm i -D sass typed-scss-modules

先程のスタイルシートをそのまま .scss に変えてみます。

swipe.tsx

import { swipebar } from "@/swipe.module.scss";
const Index = (): JSX.Element => <div className={swipebar} />;

export default Index;

型定義の出力はほとんど同じインターフェイスです。

npm run tsm src

これで Sass が利用できました。

vite 自体は .less にも対応しており、それらの型定義は typed-less-modules で出力できるようです。

ライブラリ用のビルド

最後にライブラリ用のビルド設定を確認します。

まず、package.json の外部モジュールを整理します。

package.json

{
  "peerDependencies": {
    "react": "^16.8.0"
  },
  "devDependencies": {
    "react": "^16.8.0"
  },
  "dependencies": {}
}

dependencies フィールドにある reactpeerDependencies フィールドに移動します。 react モジュールなどは、ライブラリの利用者がすでにインストールしているでしょうから、dependencies フィールドは不適切です。

また、peerDependencies に書いただけでは、node_modules にインストールされません。 開発やビルドに必要であれば、devDependencies フィールドにも追加する必要があります。

続いて、vite.config.ts を次のように変更します。

vite.config.ts

import { defineConfig } from "vite";
import { resolve } from "path";
import { dependencies, peerDependencies } from "./package.json";
import plugin from "@vitejs/plugin-react";

export default defineConfig({
  plugins: [
    plugin({
      "jsxRuntime": "classic",
    }),
  ],
  resolve: {
    alias: {
      "@": resolve(__dirname, "src"),
    },
  },
  build: {
    lib: {
      entry: resolve(__dirname, "src", "index.ts"),
      formats: ["es", "cjs"],
      fileName: (ext) => `index.${ext}.js`,
      // for UMD name: 'GlobalName'
    },
    rollupOptions: {
      external: [
        ...Object.keys(peerDependencies),
        ...Object.keys(dependencies),
      ],
    },
    target: "esnext",
    sourcemap: true,
  },
});

buildlib フィールドでライブラリ用のビルドを設定できます。 また、react ライブラリの場合、vite プロジェクトのテンプレートには @vitejs/plugin-react がプラグインに含まれています。

これは、デフォルトでは jsx-runtime 形式の肥大化したコードが生成されてしまいます。 ライブラリとしては、恐らく jsx-runtime 形式の出力のメリットは薄いため、クラシックスタイルの出力に変更します。

モジュール形式を変更する

vite のデフォルトでは、ES Modules と UMD を出力します。 UMD はグローバルな名前空間が必要です。UMD 形式を出力するには、libname フィールドに適切な名前を設定します。

上の例では ES Modules と CommonJS を出力しています。

出力ファイル名を変更する

出力のファイル名は、デフォルトでは package.jsonname + モジュール形式 + .js となります。

上の例の場合は、mylib.es.jsmylib.cjs.js です。 出力のファイル名を変更するには、lib フィールドの fileName を設定します。

これにより、index.es.js および index.cjs.js というファイルが  dist ディレクトリ下に生成されます。

依存関係のバンドルを無効にする

ライブラリでは、基本的に依存関係をバンドルすべきではありません。vite はデフォルトで全ての依存関係をバンドルするので、これを無効にします。

rollupOptionsexternal フィールドに除外したい依存関係のリストを指定します。 package.jsonpeerDependenciesdependencies を指定すればよいでしょう。

ターゲット環境を設定する

サポートするブラウザのバージョンや Node.js ランタイムのバージョンを指定できます。 build の  targetchrome58node12 など指定することで、そのバージョンを満たすコードを生成できます。

デフォルトでは、動的な ES Moduls のインポートをネイティブでサポートしているブラウザをターゲットにします。

ソースマップを出力する

ソースマップもビルドに含めましょう。ソースマップがあることで、ライブラリ利用者のデバッグなどの UX が向上します。

buildsourcemap フィールドを true にします。

以上の設定で vite build を実行することでビルドできます。

次のように出力されます。

.
├── dist
   ├── index.cjs.js
   ├── index.cjs.js.map
   ├── index.es.js
   ├── index.es.js.map
   └── style.css

型定義ファイルを出力する

型定義ファイルの出力は tsctsc-alias の利用をおすすめします。

パスエイリアスは tsc-alias を使うことでパスの解決をします。

npm i -D tsc-alias

tsconfig.json を次のように変更します。

tsconfig.json

{
  "compilerOptions": {
    "target": "ESNext",
    "useDefineForClassFields": true,
    "lib": ["DOM", "DOM.Iterable", "ESNext"],
    "allowJs": false,
    "skipLibCheck": false,
    "esModuleInterop": false,
    "allowSyntheticDefaultImports": true,
    "strict": true,
    "forceConsistentCasingInFileNames": true,
    "module": "ESNext",
    "moduleResolution": "Node",
    "resolveJsonModule": true,
    "isolatedModules": true,
    "jsx": "react-jsxdev",
    "outDir": "dist",
    "declaration": true,
    "declarationMap": true,
    "baseUrl": ".",
    "paths": {
      "@/*": ["src/*"]
    }
  },
  "include": ["./src"]
}

declarationMap も忘れずに設定します。

npm run tsc --emitDeclarationOnly
npm run tsc-alias

tsc で型定義ファイルのみ出力します。その後、パスエイリアスを tsc-alias で上書きします。

これで次のような出力になります。

├── dist
   ├── components
   ├── swipebar.d.ts
   └── swipebar.d.ts.map
   ├── index.d.ts
   └── index.d.ts.map

コマンドを並列実行する

ビルドコマンドやリントコマンドは複数になりがちです。 それぞれのコマンドの順序に依存関係が無ければ、並列実行できます。

npm-run-all を使います。

npm i -D npm-run-all

npm-run-allrun-p というショートハンドの CLI が利用可能になります。 並列実行のコマンドの例は次のようになります。

package.json

{
  "scripts": {
    "build": "run-p build:*",
    "build:scripts": "vite build",
    "build:types": "tsc --emitDeclarationOnly && tsc-alias"
  }
}

vite によるビルドと、型定義の出力は独立しているので並列化できます。

また、逐次実行のコマンドとして run-s コマンドも提供されています。 しかし、短いコマンドであれば、上のように && の方が簡潔だったりします。

エントリポイントを設定する

最後に package.json にエントリポイントなどを設定します。

package.json

{
  "main": "dist/index.cjs.js",
  "module": "dist/index.es.js",
  "types": "dist/index.d.ts",
  "exports": {
    ".": {
      "require": "./dist/index.cjs.js",
      "import": "./dist/index.es.js"
    },
    "./dist/style.css": "./dist/style.css"
  },
  "sideEffects": false,

  "files": [
    "dist"
  ]
}

module フィールドには ES Modules のパスを設定します。また、今回は CSS ファイルを含むため、 exports フィールドには、 .css のパスを指定します。

sideEffects フィールドは、ライブラリが polyfill など global に影響を与えるモジュールを含んでいない場合は false にできます。 webpack などのバンドラーが、ツリーシェイキングをより有効に活用できます。

副作用を含む場合は、Mark the file as side-effect-free を参考にしてください。

以上でひとまず公開できる状態になりました。あとは NPM に公開するだけです。

NPM への公開は以前書いた 最小構成で Typescript パッケージを公開する を参考にしてください。